棄老国

 雑宝蔵経に棄老国という次のような話があります。老人を棄てる風習がある国で大臣の一人が父親を捨てずに密かにかくまっていました。ある日のこと、神が王様に難しいクイズを出し答えられなければ国を滅ぼすと脅してきました。誰も答えることができない中、かくまわれていた大臣の老父が次々とクイズを解いて国を滅亡の危機から救い、以後その国では老人を大切にするようになったというものです。

 これは老人の経験と智慧を大切にしましょうという寓話です。うがった見方をすれば役に立たない老人ならば捨ててよいのかと言いたくなりますが、先のクイズの答えで父母や病人に親切にするのを良しとする内容のものもありそういうツッコミにも対応しています。

 倫理的な話は一旦おくとして、日本には捨てられた老人が難題を解決するという類似の昔話がいくつかあり、難題の内容も仏典によるものの他、オリジナルのものや、中には古代バビロニアに起源があるとされるものなど多種多様です。

 単に昔のクイズ集ではなく、なぜか窮地に立たされた老人が見事に答えを出していく話が多いのは、棄老国の話がベースとなっているからかも知れませんが、老人が活躍する話に人気があるからでもありましょう。現代でも三国志なら黄忠、日本の戦国時代なら朝倉宗滴などは熱く語られることが多いです。生老病死は世の定めですが、なるべく元気でいたいというのは人間として当たり前の願いです。それを叶える技術や知識は今後も発展していきます。しかし、個々人の健康でいたいとの願いが叶えられなくなる時は必ず訪れます。その時に心穏やかにいられる知恵は老人で無くても磨いておく必要があると思います。

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