森発言擁護論の問題点

 まさかとは思ったが、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(TOCOG)の森会長が女性差別発言で辞任を発表した問題で予想以上に森氏の擁護論が出ている。森氏の発言の何が悪かったのか分からない日本人がこんなにも多いのは衝撃的だ。今回は森発言擁護論の問題点につき検討していきたい。

 まず、擁護論の内容について確認しておく。ここで言う擁護論の要旨は、森氏は他の人の意見として女性は話が長く出しゃばりだと言っただけで、森氏自身はTOCOGの女性理事は立派だと言っているのに、部分的に切り取られて不当に叩かれているとするものだ。擁護論者は森氏はTOCOGの女性理事を称賛しており、この発言を女性の実力を認める発言だと言いたいようだ。

 だがこの意見は根本的に間違っている。森氏は他人の口を借りる形で一般的女性が無能だと言って、それと対比する形でTOCOGの女性理事はすごいと褒めている。女性が無能であることを前提に話をしているのは、女性の欠員が出た場合に次の理事にも女性を選ぶのを嫌がっている姿勢からも明らかだ。森氏は理事の4割を女性にするようにとの文科省のから勧告も気に入らないようだが別に男祭りをするのでは無いのだし、オリンピックの性格を考えれば女性理事の割合の最低ラインとして4割という数字は妥当であろう。要は森氏は女性が一般的に無能である言っている事になり、これが世界中からの非難につながっているのだ。TOCOGの女性理事が有能かどうかは関係ない。

 個人的経験の範囲内でも会議の席で森氏が指摘するような女性限定で無駄な話が長いという現象には遭遇したこともない。そもそも論では、森氏がいた政界では会議の前には根回しが完了している場合が多いのだろうが、実社会では会議とは人が集まって議論するためにあるのだから皆して大いに話すべきだ。

 また、森氏擁護論者の中には女性理事の割合が4割以上と決まっている事を男性差別であるとする意見も多いようだ。だが、なんだかんだで男社会の日本において女性に発言の機会を保障するのは社会正義上必要不可欠だ。これは決して男性差別ではありえない。

 また別の擁護意見として、森氏の生きた時代の価値観では男尊女卑は当然で今の価値観と違うという理由で叩くのは可哀想だとするものもある。だが、それは明らかにオリンピック憲章第1章2-8「男女平等の原則を実践するため、あらゆるレベルと組織において、スポーツにおける女性の地位向上を促進し支援する。」に反しておりそういう価値観の人間がそもそもTOCOGの会長に就任してはいけなかったといえる。

 幸いに森氏を擁護する人達は割合としてはさほど多くは無い。しかし、SNSなどを見るにかなりの数に登ると思われ、日本全体の評判に関わる恐れもある。困ったものだ。

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