識は境に托して心となす
大乗仏教の基本の一つである唯識論を現代風に言うと、五感から得られた情報は意識に統合され自分に対する執着心に歪められて心の深いところに蓄積されると考え、五感から得られた情報が統合される意識もまた蓄えられた記憶を元に自分に対する執着心の影響を受け歪められるのです。人は外界のうち認識したものを事実として捉えますが、五感と心の深い部分との間には自分に執着する心があり、外界の事実を歪めて認識してしまっているのです。唯識論の論書の成唯識論述記に「識は境に托して心となす」という言葉があります。この言葉の「識」は五感とその認識や自分への執着心や記憶などのことで、「境」は外界のことです。外界をどう認識しどう感じるかは人それぞれバラバラなのです。
本日、残念なことにアメリカの連邦議会に暴徒が突入しそのうち4人が警備に射殺されるという事件が起きました。ワシントンで行われていたトランプ大統領を支持する集会に集まった群衆に向かいトランプ大統領が連邦議会に向かうように呼びかけた事により起きた事件です。これは事実ですが、この事件に関してはそれを見る人の立場により様々な認識の歪みがあり、ネット上を騒がせています。まず、暴徒達やそのシンパは先の大統領選挙で不正があったのでそれを正す為の行動だと見ています。ただ、大事になったあとに当のトランプ大統領は暴徒たちに家に変えるようにツイートしており、連邦議会に突入させるつもりまでは無かったのかも知れません。しかし、この事件を大統領による計画的犯罪であると見る民主党支持者は多いようです。逆に、この混乱を受けて少なからぬトランプ支持者がこの事件は極左暴力組織であるAntifaの陰謀であると言っていますが、流石に無理があるでしょう。常識的に考えれば、大統領選での敗北を認めたくないトランプ大統領が、集会で群衆を煽ったところ想像以上に暴徒化した悲劇と見るのが妥当かと思います。
ただ識は境に托して心となすのです。外界に起きた事実は一つでも、それを見る人により千差万別の真実が人の認識として存在するのです。私達が見ているそれぞれの真実が、外界の事実と同じかどうかも究極的には分かりようがありません。ですが、自分に執着する心による歪みをなるべく少なくすることで、より冷静な判断は出来るようになるはずです。
大統領選も、新型コロナウイルス感染症でも極端な話が吹聴され、それを信じた人達が極端な行動をとりがちです。まずは冷静になりましょう。
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