緊急事態宣言によるコロナ以外の疾病増加

 新型コロナウイルス感染症の拡大に対して、政府では再度の緊急事態宣言が検討されているが、経済的補償や強制力にかける中途半端で長期の規制は効果が不十分であるばかりでなく、新型コロナウイルス感染症以外の疾病の増加を招くのは確実だ。このことを踏まえて、政府には強力な規制と補償と人心の安定が保てるような施策をお願いしたい。

 なぜ、このようなことを断言しうるのかと言うと、2011年に起きた福島の原発事故で発生した大量の避難民の健康状態のデータがあるからだ。避難や失業に伴う家族離散などにより、避難民には著しいストレスが加わった。K6と呼ばれる精神健康状態評価で、13点以上だと重い心理的負荷があると判定される。通常の生活環境ではK6で13点以上の人口は全体の3%ほどとされるが、事故1年目の福島からの避難民ではこれが14.6%にも達していた。こうしたストレスによりうつ病が増え、残念ながら自死率も上昇した。更に、運動不足や閉じこもりがちな生活となったため、肥満や糖尿病や高血圧や脂質代謝異常、さらには慢性腎臓病も増加した事が分かっている。

 つまり、新型コロナウイルスに対する緊急事態宣言は、その目的であるウイルス感染症の拡大を抑えるための強い規制だけでなく、生活の保障と社会的不安の排除も同時に目指さなければならない。もし名目上の緊急事態宣言のみで、結局は国民の自助に期待するだけのお願いしかしないのであれば、むしろやらない方がマシかも知れない。

 医療現場の人間として緊急事態宣言を出すのには異論は無い。だが、その内容こそが重要であると政府には理解を願いたい。

コメント

このブログの人気の投稿

妙好人、浅原才市の詩

現代中国の仏教

懐中名号