人を生かす情報、殺す情報
1.人を生かす情報
ある時代に科学的に正しいと思われていた事が後に違うと分かる事もありますが、間違いを修正しつつ科学は進歩します。現代科学はこの歴史の積み重ねでもあり、基本的には昔の物より今の方が正しいのです。科学は感情や煩悩や思惑を廃した純粋な知が求められますが、基礎分野を離れ応用に行くほど人間の思惑に接近していき、最終的に科学から生み出された道具や情報を受け取る人間は、それをどう利用しようかということを考えます。
純粋な知は単なる事実です。良いも悪いも生かすも殺すもありません。それらは利用する側の心の問題です。天気予報だって、悪天候を利用した犯罪計画を立てることも可能ですし、高波の予報が出たからとわざわざ波乗りに行って遭難する人もいます。科学的知見は人を生かす方向に使いたいものです。また、科学の仮面をかぶったニセ情報には十分な警戒が必要です。
2.人を殺す情報
一方で嘘の情報は殆どの場合で有害です。天災が来るのに来ないという誤った情報が流布されれば、それを信じて準備を怠った人が死傷することもあるでしょう。信じたくない事実があったとしても、それから目を背けていては被害は広がるばかりです。
また、何か大きな社会問題がある時に、それを特定の人物や組織や民族の陰謀だとして過激な行動に出る人達も後を断ちません。なんの証拠も無いのにこの手の話を信じてしまう人が多いのを見るにつけ、人がいかに嫌なことから目を背けて自分たち以外の何かを悪者に仕立て上げたがっているのかがわかります。
この手の情報も言論の自由のうちだとの意見もありますが、まず無根拠に他人を悪人扱いしている時点で侮辱や名誉毀損ですし、それに基づいて暴力行為を煽動するような言説は明らかに犯罪であり認めてはなりません。それでもしつこく、万人に反論の機会があるのだから個別に取り締まれば良いだけで、言論の自由を優先せよとの意見もあります。しかし、これを言う人間の大半は弁舌の才に恵まれた影響力をもつ人達です。陰謀論者のいう悪の何々民族に所属するだけの無力な一般人は数の暴力の前に抗う術もありません。ルワンダ虐殺事件も、ラジオの煽動が大きく影響したのは有名な話です。言論の自由とはこうした危険な言説を野放しにすることではありません。
3.人を生かしも殺しもする情報
他、正誤ではない情報、自分の心情や考えの吐露は人を生かす場合もあれば殺す場合もあります。この文章だってどちらにもなりえます。なるべくそうならない様に注意はしても、避けられるものではありません。少し極端な例では、鬱に悩む人がSNSで頻繁に自死をほのめかしたりするのは、それに反応して止めようとする人が現れるであろうことを考えると、患者からのSOSを拾えて有益ですが、その意見に影響を受け自殺を図る人が出てくる可能性を考慮すると有害です。また、特にネット上だけの関係では助けようとしたところで、最悪の場合に物理的にそれを防止することが難しく、良かれと思っての発言が逆の結果を招く恐れもありうかつに介入出来ません。かと言って放っておくのも心配です。自分の力不足を嘆き祈るくらいしか出来ません。少なくとも自分が発言する時は、殺すとか盗むとかそういう事をそそのかす内容にならない様に注意すべきです。
4.さいごに
情報を利用する場合はまず、それが正しいものであるかどうかを確認すべきです。出所が怪しい情報を簡単に鵜呑みにしてはいけません。また、正しい情報でもそれを善い事に使うようにしましょう。正誤ではない自分の考えを述べるときも、なるべく相手を傷つけない言葉や表現を使いましょう。
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