極悪非道の人への礼拝
法華経に出てくる常不軽菩薩の話では、悟ってもいないのに悟ったと思い上がる僧や在家の仏教徒たちに対して、常不軽菩薩が「あなたは必ず仏になる人ですから軽んじません」と言って礼拝しました。また、菩薩行の基本となる四弘誓願の一番目は全ての衆生を救おうと誓う事です。全ての人はその内に仏を宿しているのですから、どんな人にも敬意をもって対応するのは仏教徒の心得です。法華経を奉じていた宮沢賢治の詩「雨ニモマケズ」はこの菩薩行を詠んだと言われています。
さて、全ての人に対してその内なる仏への礼拝の心を持って応じるのは、仮に相手があなたの家族を殺した強盗殺人犯でも、民族浄化を行った独裁者でも、非合理的な理由で暴動を起こす陰謀論者でも、どんな極悪非道な人に対しても敬意をもたねばならないと言うことです。これは難しいことです。
もちろん、刑事事件を起こしている相手が目の前にいれば、自分の身の安全の確保を最優先しつつ自首を促すなり、警察に通報するなりしなければなりませんが、菩薩行を修める者はその際に相手を憎む心や怒りの心をもってはなりません。相手が誰であってもです。
そんな時に、相手もいつか必ず仏になる人なのだと礼拝する気持ちがあれば、いくらかでも怒りを抑える事が出来るかも知れません。相手が欲する不条理を受け入れなくても敬意を持つことは可能です。
誰しも嫌な相手の一人や二人はいることでしょう。その怒りにとらわれるのは自分のためにも相手のためにもなりません。そんな時は、相手を礼拝するするつもりで見てみると、完全に怒りが消えなくても、冷静さを取り戻せることでしょう。
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