立場が強い人間の方が怒りを表現しやすい

 表題の通り、立場が強い人間の方が弱い者よりも怒りを表出させやすいものです。理由は簡単で、立場が強い者の怒りは、弱い者達を萎縮させ強い者の意見に従わせやすくする効果があるからです。逆に弱い立場の者が立場が強い者への怒りをあらわにすれば、強い者やそれに従う者達から潰されます。

 強い立場の者に気をつけて欲しいのは、一見怒っていないように見えるだけで立場が弱い人間も怒っているだろうことを忘れないようする事です。強い者が寝首をかかれる時、裏切られたなどと言いますが、多くは単に他者の不満に鈍感だっただけです。

 立場が強い者にとって怒りの表出は、物事をすぐに思い通りに進めるのに最も容易な方法です。だから、世の独裁者は概ね怒っています。内外に敵を設定して恐怖で国民を支配するのです。また、民主主義国においても、首長の選挙などで何でも公務員が悪いとして怒ってみせる事で票を稼ぐのは、公務員は行政の長にとっては配下であり、圧倒的に有利な立場である事から報復される恐れがほぼ無いからです。

 しかし、こうして行政の長が絶えず怒りその民を締め上げるのは、結果として水面下に怒りがたまりますし、スケープゴートとして公務員を過度に締めあげれば、社会のインフラや治安や福祉の面において行政の力が著しく低下するのは明らかです。結局、組織全体のためにもなりません。

 そもそも仏教的には怒りは滅すべき煩悩の代表の一つですが、特に人の上に立つ者は怒ってはならないのです。社会的な責任がある者の怒りは個人だけでなく、全体に悪影響を与えるからです。別に国や自治体の指導者じゃなくても、会社組織や趣味のサークルに至るまで、上の者はより厳しく自分を律する必要があります。

コメント

このブログの人気の投稿

妙好人、浅原才市の詩

現代中国の仏教

懐中名号