妙見神

 今年はコロナ禍で昨日今日にあるはずだった八代の妙見祭も中止でした。神事自体は行われたと思いますが寂しい事です。改めて疫病の早期沈静化を祈ります。

 さて、そんな訳で今日は妙見神(菩薩)についてお話します。妙見信仰はあちこちの信仰が混じって出来たハイブリッドなものとする説もありなかなか興味深いものがあります。

 日本に来た妙見菩薩は仏教の菩薩信仰と道教の北辰(北極星)信仰の合成とされ、少なくとも晋代には信仰が成立していました。日本では天地造化の神である天之御中主神が当てられています。北辰信仰でも北極星は最高神とされますが北辰信仰自体はより古い時代に遡る歴史があります。ですが、北極星は歴史的視点では比較的短い周期で変わっており、古代の人が崇めた星と現代の物は別の物です。現代の西洋風の星座の原型は紀元前5千年ほど前のメソポタミア地方にあると言われ、この頃からすると3回は北極星は変わっていることになります。ちなみに今から8200年後には白鳥座のデネブが、11500年後には琴座のベガが北極星になると予測されています。明るいほうが探しやすくていいですね。現在の中国がある地方にもメソポタミア地方から信仰が伝わったとする説もありますが、人間の寿命レベルの時間では天にあって動かない星を特別視する事は別に文化の交流が無くてもありうることで果たして本当かどうか分かりません。ただ例えば、秩父神社の秩父夜祭が、秩父神社に祀られる女神とされる妙見神と、その南にある武甲山の竜神(蛇神)の男神である蔵王権現が年に1度の逢瀬を楽しむものとされていますが、妙見菩薩が日本に輸入されるより前からの信仰とされており、北辰信仰の世界的な広がりに夢想が広がります。日本での妙見信仰も、水の神だったり、観音様の化身だったり、薬師如来の化身だったり、軍神だったり、キリスト教のThe神だったり多種多様に渡り、謎の出自に恥じない多くの顔をもっています。

 何でも節操なく取り込みすぎとの批判もあるかも知れませんが、そもそも大乗仏教的には全てに仏性が宿っているので問題ありません。こうした何でもありの精神はきっと異文化の理解にも役に立つことでしょう。世界が平和でありますように。

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