四面大菩薩
通常、四面仏と言えば梵天の事が多いですが、本日お話する四面大菩薩は温泉神社に祀られている四面神の事で九州の島全体をご神体とする神(仏)の事です。古事記の国生みの話にあるように、九州(筑紫島)は一つの体に四つの面があるとされているのです。
長崎県は雲仙にある温泉神社(うんぜんじんじゃ)は奈良時代に行基菩薩によって開かれたとの伝説を持つ神社です。四面神は五柱の神の総称で、そのうちの四つは九州の筑紫(北部九州)、豊(現在の大分付近)、肥(現在の熊本付近)、熊曾(南部九州)の各土地自体が神とみなされています。平安時代に雲仙が修験道の道場となると、四面神はその中央を大日如来の垂迹とされ周囲の四柱の神を不空成就如来、阿閦如来、宝生如来、阿弥陀如来に当てて信仰されるようになります。雲仙の山はかつては中央の山が四つの山に囲まれた形となっており密教の金剛界曼荼羅と同じ配置だったのです。こうして仏教と習合した四面神は四面大菩薩として崇敬されていました。鎌倉時代の元寇の際にも四面神が物理的に顕現してモンゴル軍と戦ったとする伝説もあり、九州の守り神だったのです。四面大菩薩は雲仙だけでなく、隣の諫早でも厚く信仰されており、現在の諫早神社はかつてあった真言宗の荘厳寺というお寺の中の四面宮とよばれる社が原型で、この寺では四面大菩薩も祀っていました。神仏習合が崩れた明治の廃仏毀釈後は、仏像としての四面大菩薩の多くは姿を消しその存在を知る人も徐々に減ってはいますが、今でも四面信仰は残っています。
九州に強い台風が近づいていますが、四面大菩薩の御加護がありますように。
南無四面大菩薩
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