明日の診療に役立つ日本仏教の簡単なまとめ

  仏教者にも気持ちよく療養生活を送って頂くのが、安居堂の目的の一つです。そこで、今日は特に仏教に興味のない医療・介護者の人たちが、熱心な仏教者の診療をするにあたり参考になるように日本仏教各宗派の簡単な教えをまとめてみました。実際の介護にあたっては、患者様の考えを傾聴するのが第一ですが、相手の宗派につき簡単にでも知っていると理解の助けになります。また、今回は簡単にまとめる為に、伝統宗派でも信者数が少ないものは省いています。各宗派の教えはこんなに単純ではないとのお叱りを受けるかも知れませんが、教義よりも信者の気持ちや考えの方を優先した解説にしてみました。ご容赦ください。

 それでは信者数が多い順に解説してまいります。

 まずは浄土教系です。浄土宗とか浄土真宗が有名です。浄土教系の基本は、まず自分たちが救い難いダメ人間だと自覚することに始まります。何が正しいのか何をすれば良いのかを知っていてもなお、それを行う事が出来ない。そんなダメな人類を救うと誓って悟りを開いたのが阿弥陀如来という仏様なのです。この阿弥陀如来の誓いを信じて仏様を念じる人は死後に成仏できるとされており、常にこの救いに感謝しながら自分を見つめ直しつつ生きるのです。これは絶えず仏様と自分とを比較する事にもなり、自分の過ちに気付きやすくなる効果もあります。

 次は真言宗系です。真言宗系の基本は世界の全ては大日如来という仏様の表れであるとみることにあります。あなたも私も山も川も星も風も大日如来なのです。こう考えると自分の中にも全宇宙が存在することになり、人間は生きながらにして仏様に成れるとされます。開祖の空海もこの世で仏様となった人間として崇められています。また、現世利益の追求も必ずしも悪とはみなさず良い方向に転換できるとの考えもあり、加持祈祷の類が日本の仏教では最も盛んなのも特徴です。このような教えや修行法を密教として従来の仏教である顕教の上位にあるとしています。確かに他宗派では否定されがちな人間らしさや煩悩を活用しようとしており違いはあります。そのためか信者さんにも豪快な方が多い印象があります。

 日蓮宗系です。日蓮宗系の基本は法華経こと妙法蓮華経です。一心に法華経を奉じており法華経原理主義と言っても過言ではありません。その肝となる思想は、お釈迦様は実は死んでおらず永遠の存在であり、法華経の信者は世界を救う為の菩薩としてこの世に仏の理想郷を築く使命があるとする考えです。開祖の日蓮上人はこの菩薩達のリーダーであるとみなされ崇められています。信者には社会的に良いことをしようとするモチベーションが高い傾向があります。

 禅宗系です。禅宗でまとめると叱られる場合もありますし、その基本を言葉で表すのも不可能ですが、あえてまとめるとその基本は自分の中の仏さまを見つめ悟り続ける事にあります。そもそも、禅宗では言葉で伝えられることには限界があり、師からの指導と自身の禅により非言語的に仏様の正しい教えが伝わると考えているのです。深い集中や思索を重んじることから、冷静さと個性の調和を保つ信者さんが多いです。とりあえず、心を落ち着かせて座ってみると、信者さんの気持ちが少し分かるかも知れません。

 天台宗系です。比叡山で有名ないわゆる鎌倉仏教の母体となった宗派です。天台宗も日蓮宗と同じく基本は法華経思想で社会改革にも熱心ですが、外向きと言うよりは一人一人が自分の役目をしっかり果たす事を重視しています。また、日本の天台宗は、密教、浄土教、禅なども総合的に学べるように整えられており、法華経だけでなく割と何でもありの懐が深い宗派であり、信者さんにもその懐の深さがあるように見えます。

 以上で日本仏教の信者の人口は殆どカバーできます。なお今回紹介の無かった比較的小規模の伝統宗派はまたいつか別の形でまとめてみます。

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