毘盧遮那仏の小話

 昔、ある和尚さんに質問をする人がいました。 
 「毘盧遮那仏とはどのような仏様でしょうか?」
 和尚さんは答えて言います。
 「頭には灰をかぶり顔は泥だらけや」
 「なんでやねん!」と質問者がツッコミを入れると和尚さんはこう答えました。
 「ワシの何が悪いんや?」

 毘盧遮那仏は華厳経の教主であり、宇宙の真理そのものとして大日如来と同一視される仏様です。盧遮那仏と毘が付かない語もあり、華厳経を漢訳した際のバリエーションとされていますが、宇宙の真理を示す仏を毘盧遮那仏、通常のキャラクターづけされた仏を盧遮那仏、それがこの世に人間として表れた姿が釈迦如来とする見方もあります。要は、世界にあまねく仏さまであり、この世に生きるもの全てに仏の性質が元から備わっているとする如来蔵思想を体現した仏であるとも言えます。有名な奈良の大仏も盧遮那仏です。

 さて、最初の和尚さんと質問者の話ですが、つまり和尚さんは自分も毘盧遮那仏の一部であるぞと言っているのです。気づいていないだけで実はそこら中が毘盧遮那仏な訳です。この話は禅問答のものですが、この発想が密教の即身成仏の元となっていくのです。

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