西郷南洲翁手抄言志録より
今回は仏教ではなく儒教の書ですが、幕末の儒家である佐藤一斎の書「言志四録」より百一条を西郷隆盛が抜粋して座右とした「手抄言志録」から仏道にも通じる言葉の紹介です
不知而知者 道心也 (知らずして知るものは道心なり)
知而不知者 人心也 (知って知らざるものは人心なり)
現代語訳だと「知識として分かっていなくても身につくものが正しい道理の心であり、知識として分かっているつもりなって勝手に決めつけているのが他人の気持ちだ。」という感じです。
道心については例えば、嘘をついたり盗んだり暴力を振るうのはいけない事だというのは、もしなぜそれがいけないのかを説明出来なくても直感的にいけないと分かるものです。また、何かの道を極めようとすると知識としての理解だけではなく、経験で体得するしかない事は必ずあるものです。
人心については例えば、「あなたの気持ちはよく分かる」などと言う人が本当にあなたの気持ちを分かっているかは怪しいものです。人は往々にして、他人の気持ちを分かったつもりになって自分の都合のいいように人の心情を勝手に決めつけてしまうものです。相手の事をおもいやるのは良いことですが、自分にとって都合の良い考えを相手に押し付けるのではなく、まず相手の話を良く聞く心の余裕を持たねばなりません。
この言葉を仏教的にみれば、禅宗や密教の系の宗派でも仏道は表面的な言葉だけでは理解出来ないしています。また、自分も含めて人の心を言語的に理解しようとすると必ず偏見が混じってしまうものです。座禅などで非言語的に知った、悟ったつもりになるのもそう認識してしまえば慢心に過ぎません。
西郷隆盛と言えば、歴史的には戊辰戦争や西南戦争で有名な武人ですが、思想家としても人気が高く学ぶべきところがたくさんあります。「手抄言志録」は西郷オリジナルの物ではありませんが西郷が厳選し座右としており、ある意味で西郷哲学のエッセンスとも言える書です。分量も少ないので興味があればぜひ一度通読してみてください。
それではまた、合掌。
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