虫供養

 梅雨もあけ、虫が多い季節になりました。蚊や蝿などの害虫のたくさん人間の都合で死にます。そうでないと人間が死んだり生命の源である食料の生産量がさがったりするので仕方がありません。このため、日本各地で主に秋頃になると農作業で死んだ虫を供養する行事が行われますし、殺虫剤メーカーの業界団体も毎年1月に虫の慰霊祭を行っています。生きるために必要な殺生でも、正当化せずに懺悔する姿勢が実に日本仏教らしい風習です。

 人間は生きているだけで何者かに被害を与えて生きているのです。食事ひとつにしても、それを作ってくれた人、食材となった動植物、その生産の過程で死んだ虫など、色んなものとの縁がつながっています。食事の時に手を合わせ感謝と祈りを捧げるいただきますの風習でもみられるように、世界の全てに感謝をする精神性が日本仏教にはあります。自分は人や自然を含めた世界との関係性の中にしか存在せず、世界への祈りは自分に対する祈りでもあります。

 蚊は病気を媒介し世界で最も人を殺している虫でもあります。温暖化が進む昨今では日本国内でも熱帯地方の病気の増加が懸念されます。また、昔ながらの日本脳炎だって、養豚場が近くになくても近年は都市部近郊で増加傾向にある野生のイノシシから蚊が媒介して感染することがあります。こういう危険もありますので蚊は発見次第殺して構いませんが、時々は死んでいった蚊のために祈ってみてください。南無佛。

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