遺書の偽造

 お盆のシーズン到来です。先月ブログに書いた様に元々は旧暦7月15日の日本仏教の行事であるお盆は、現在では8月13〜15日に行われるのが主流です。このお盆の期間は終戦の日と重なることもあり、先の大戦で亡くなった人が偲ばれる時期でもあります。

 さて、そんなお盆の時期に先の大戦にまつわる悲しいニュースが先日ありました。18歳で戦死した人間魚雷回天の乗組員の遺書として出回っている物が、偽造されたものだったのです。偽造された遺書が世に出たのは平成7年のことでだいぶん時間も経っていますが当時から、遺族には別の遺書が残っていること、実際の家族構成と違う内容が偽造遺書に書かれていたこと、回天の作戦運用の観点からも偽造遺書には矛盾があることなどより、回天の乗組員の生き残りから抗議を受けていました。しかし、偽造の犯人(故人)はこれをネタにした講演など詐欺行為を続けていたのです。この犯人は自らも回天乗組員の生き残りと主張していましたがこれも嘘でした。

 死者は抗弁できないのをいい事に、ウケの良い遺書を捏造し金品を詐取する犯罪行為は断じて許しがたいです。また金銭目的のもの以外にも戦争にまつわる嘘は多く出回っています。朝日新聞が済州島での慰安婦に関する記事の捏造を認めて謝罪した事もありましたが、この捏造は金銭目的と言うよりは政治的な意図であったのは明らかです。戦争経験者は減る一方であり、当時を知る人なら当然見破られるような嘘でも、今後は徐々に見破りにくくなるのは間違いありません。明らかな一次資料を提示できない話は信じないのが無難でしょう。

 特に、あなたが劇的で心を揺さぶるような戦時中の逸話を聞いたならば、それが美しすぎるものでも醜悪すぎるものでも、本当にそんな出来過ぎな物語があったのか、それを裏付ける証拠はあるのか少し考えてみるのが良いです。有名なストーリーで既に多くの人の検証を受けているものは概ね信用できますが、多くの人が支持していても衝撃の新事実が誰かの証言によって明らかになった!などとする物は冷静に検証するべきです。用心用心。

 死者すら自らの欲望のために利用するとは人間の煩悩の深さには驚かされます。南無佛。

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