アビガンについて

【注意】これは2020年7月のブログ記事です。その後、アビガンが新型コロナウイルスに無効であることは確認されています。


 藤田医科大より新型コロナウイルスに対する抗ウイルス薬アビガンの有効性が確認出来なかったとの発表がありました。それ自体は良いのですが、ネット上の反応をみると誤解している人も多いようなので補足しておきます。

 今回は無症状や軽症の患者に対して、アビガンを内服した人36名と内服していない人33名の比較で、内服した方がウイルスの減少が早く解熱も早い傾向があったが、統計学的な有意差がなかったとの発表です。さらに検査の人数を増やせば効果が確認出来るかもしれませんが、少人数で明らかな差が出るほどの効果はなかったと言う話です。

 例えばある病気に対して治療をしたら50%の人が助かり何もしなければ10%の人しか助からないとした場合、治療した人1000名と治療しない人1000名を観察すれば、治療した人たちは約500名が助かり治療しなかった人たちは約100名が助かることになります。もちろん、多少のブレはあるのでちょうど500名だったりちょうど100名だったりするわけではありません。では、治療した人1名と治療しなかった人1名を観察した場合はどうでしょうか?この時、両方とも助からない確率は45%です。たまたま両方助からなかったとしても、それで治療の効果を判定することは出来ません。

 新型コロナウイルス感染症に関しては、年齢や状態により死亡する確率に差はありますが、だいたい0.2〜15%の間でものすごく高確率ではありません。仮に平均5%だとすると、30人を観察すれば1.5人ほどお亡くなりになります。もう30人に何らかの治療をしてそのうち0〜2人ほどがお亡くなりになっても治療の効果判定は困難な訳です。元々回復しやすい病気の効果判定には多くの検査数が必要となるのです。(回復しやすいとは言ってもこれだけ感染しやすいと十分な脅威です。コロナ無害とか言っている訳ではありません。)今回の細かい数字は確認出来ていませんが、効果が確認されなかったのは特に不思議ではありませんし、少なくとも投与していない群と比較して明らかな不利益(副作用や死亡率の上昇など)もなかったと発表されています。

 一部の人達から藤田医大でのアビガン投与例の死亡率が他の地域での死亡率と比べて高いとの指摘が上がっていますが、条件を統一していない比較など全く無意味です。アビガンに薬害ありという結論ありきの暴論ですので気にしないでください。もっとも、症例を積み重ねれば何らかの副作用が見つかる可能性はありますが、少なくとも彼らの論理展開はむちゃくちゃです。治験は続けられるそうですので今後の報告を待ちましょう。

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