法演の四戒

 宋代の臨済宗の高僧であった法演が、弟子の仏果に説いた住職の心得が法演の四戒です。その解釈にはいくらか幅がありますが味わい深い言葉です。その四戒は以下の四つです。

第一
勢い、使い尽くすべからず。
勢い、使い尽くさば、禍必ず至る。

第二
福、受け尽くすべからず。
福、受け尽くさば、縁必ず孤なり。

第三
規矩、行い尽くすべからず。
規矩、行い尽くさば、人必ずこれを繁とす。

第四
好語、説き尽くすべからず。
好語、説き尽くさば、人必ずこれを易んず。


 さて、この法演の四戒の解釈ですが、本によってばらつきがあります。ここでは、法演が弟子の住職就任にあたり送った言葉で有ることを考えた上で、私が個人的にこれだろうと思う物を書いていきます。

 まず、戒の第一ですが、権力乱用の禁止です。上に立つものが無茶な指示ばかり出していては組織を支える人の方がもちません。しかし、権力を振るう側はその事を往々にして忘れてしまいます。

 戒の第二は、利益独占の禁止です。組織のトップに立つものは組織の利益分配にも大きな裁量権を持っています。それを利用して自分ばかりが利益を貪り、自分と組織を支えた人たちに還元しなければ、孤立してしまうでしょう。

 戒の第三は、規則の機械的適用の禁止です。規則と言うものは基本的には守るべきものですが、犯罪だって情状酌量の余地が生じれば減刑されます。状況に応じて柔軟な運用をしないと反感を買う原因となるでしょう。例えば、出社中に事故に巻き込まれ人命救助にあたった結果、遅刻した社員を懲戒処分にするようなことはあってはなりません。

 戒の第四は、言葉への偏重禁止です。これは禅宗の住職就任にあたっての注意なので、好語をお世辞などの意味ではなく、仏道修行での指導の言葉と解釈しました。仏道修行とは結局の所、理論や言葉だけでなく実践が重要なのです。あまり細々と解説して、教えを受けた側が分かったような気になってしまうのは逆に修行の妨げになるのです。人助け一つとっても、自分の頭の中でよいと思っていることでも、現場で実践すると相手には迷惑だったりすることもあるのです。教育者、指導者としては、部下にやらせてみるのが大切なのです。

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