特別養護老人ホームにおける事故
一昨日、特別養護老人ホームで認知症の患者様が溺死した去年の事件で担当の介護福祉士が書類送検されたとの報道がありました。まずは亡くなられた方のご冥福をお祈り申し上げます。
さて、事件の発生から送検まで1年ほどかかっており、時間をかけての捜査がなされてのことなのか、後日に告発をうけたものなのか分かりません。なので、今回、送検された方の批評は控えます。ただ、あくまでも一般論として、目を離したすきに溺死したとのことを考えると、やはり慢性的な人で不足が遠因となっている感はあります。
今回の事件では施設の規模やスタッフ数は分かりませんが、概ね全国的に似たような状況かと思われるので、細かいことがわかっている例を上げて考えてみます。今月上旬に職員による組織的な入所者虐待事件が話題になった特養では看護師と介護福祉士33名で80名の入所者の介護をしていました。実際は残業やサービス残業もあるでしょうが、1週間に5日間、1日8時間働いた場合、その施設の1時間あたりの平均スタッフ数は約8人となります。1人で10名の入所者を介護する計算です。特別養護老人ホームの入所者は5段階の要介護度で3以上の自力での歩行に障害がある人ばかりです。この施設では不適切な身体抑制が虐待に当たるとして問題となりましたが、こうした人員不足の状況でもスタッフは、十分な介護を行い、入所者に人間らしい生活を送らせ、身体抑制は禁止されるが転倒・転落・窒息・溺水など完全に防止しないと責任を問われます。しかも過重労働で安月給とかいったいどういう拷問かと問いたい。
以前紹介したユマニチュードという認知症介護技術(解説回の記事はこちらをクリックしてくださいhttp://www.angodo.com/2020/02/blog-post_28.html)がありましたが、あれも認知症の患者様が人間らしく生きていく上で生じる事故に関しては寛容な社会でないと全面的な実施は困難です。溺水や窒息や転落はもちろん様々な工夫で防ぐようにしなければいけませんが決して無くなることはありません。もちろん、一部の異常者のように意図的に虐待や殺害を企てていないかは警察の調べが入るでしょうけど、事故の全てに介護福祉士の責任が問われるのは現場の士気にも関わります。
こうした問題を解決するには、公的資金の注入による人員の確保、社会的にも生活に伴う事故死は起きうることだと理解してもらう啓蒙が必要だと思います。現在、転倒で亡くなる方は年に1万人ほどで、交通事故死の倍ほどいます。自宅で入浴中の溺死は年間5千人ほどと言われます。窒息も年間9千人ほど亡くなると言います。高齢化して認知機能障害も起きると日常生活するだけでも命がけなのです。核家族化や独身化が進み、家で高齢者を看取ることがほとんどなくなった現在、高齢者はいつ亡くなってもおかしくないという現実が分からない人が多くなっています。高齢者だけでなく人の命ははかないものです。だから今を大切にしないといけません。
それではまた、合掌。
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