母の日

 日本では5月の第2日曜日を母の日とするのが一般的です。この風習自体はアメリカから輸入されたものですがすっかり定着していますね。

 日本仏教は先祖崇拝色が強く、日ごろの法話でも親孝行の話はよく聞かれます。また日本に限った話ではありませんが、偉大な慈悲や愛を母になぞらえる言説も古くからみられます。

 親鸞聖人の皇太子聖徳奉讃に
 「救世観音大菩薩 聖徳皇と示現して 多々のごとくすてずして 阿摩のごとくにそひたまふ」
 とあります。多々とは父で阿摩とは母のことで、現代語訳では、聖徳太子が救世観音菩薩となり現れて、父のように見捨てず、母のように寄り添ってくださっているとの意味です。
 観音菩薩の慈悲は世界のすべてを対象としていますが、その有様を説明するときに父母の子への愛はわかりやすいたとえです。

 日蓮上人の遺文である諫暁八幡抄には、自らの布教について
 「此れ即ち母の赤子の口に乳を入れんと励む慈悲なり」
 としており、自らの生涯と存在のすべてをかけた布教を母の愛にたとえています。
 また、子供の守り神として知られる鬼子母神は日蓮宗の根本経典である法華経の中でその行者を守ると説かれています。

 言い伝えではこの鬼子母神は1000人の子を持つ母であり、この子らを育てるために栄養をつけようと人の子を捕食する邪神でしたが、お釈迦様により自身の末の子が隠されてしまい、その悲しみから改心し逆に子を守る善神になったと言われています。

 また、仏教行事であるお盆の元となったと盂蘭盆経という経典は、釈迦の弟子として有名な目連が餓鬼道に落ちて苦しむ亡くなった母を救う話です。この時の母を救う方法が、夏のお堂に籠っての修行(安居)明けの(旧暦)7月15日に僧たちに布施を行うことでした。お盆が旧暦の7月15日や月後れの新暦の8月15日に行われるのはこの影響です。母の愛は子を守るためなら時に餓鬼道や地獄に落ちるような行為でもします。母の日だけではなくお盆にも自分の為に苦労した母への報恩を忘れぬようにしたいものです。合掌。

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