八大人覚

 日本に曹洞宗を広めた道元禅師の絶筆である「正法眼蔵」のなかで道元禅師が最後に書かれた巻が「八大人覚」です。

 八大人覚は、元々はお釈迦様がお亡くなりになる前に説かれたとされる遺教経にある出家僧が覚知すべき八つの教えです。正法眼蔵の八大人覚の巻はこれの解説で、道元禅師も自らの死を覚悟して書かれたのかもしれません。

 その八大人覚は以下の八つを指します。小欲、知足、楽寂静、勤精進、不忘念、修禅定、修智慧、不戯論、です。

 八大人覚のそれぞれ意味を簡単に説明します。はじめの小欲と知足は小欲知足として有名な言葉ですね。欲を少なくして満足することを知るという意味です。楽寂静は一人で静かな場所にいることを願うという意味です。勤精進は、善い事をするように勤める事です。不忘念は、正しい仏法を心に念じ続ける事です。修禅定は、仏法の中にあって心が乱れない事です。修智慧は、偏らないものの見方が出来る悟りの智慧で、全ての仏教者が目指すところです。不戯論は、執着や偏見に基づく無駄な議論を避けるとの意味です。

 これは出家僧向きに説かれた教えですが、欲を少なくして満足し、一人静かに善行を修め、仏法の中にあり心を乱さず智慧を持って、無駄な争いを避ける、この生き方は、厳しい世にあって在家も大いに参考にすべきものがあります。

 穏やかに生きていける事を願って、合掌。

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