患者様の意識がない場合や高度の認知症がある場合などの話とACP
今、仮に己の死期が迫っているとしてその時どうしようかと想像すれば、皆様は色々と思うところがあると思います。しかし、医療現場において終末期の患者様が必ずしも色々と考え思いを巡らせる事が出来る訳ではありません。例えば脳卒中だとか認知症の進行などで、患者様の意識が無いとか物事を判断できない状態にある場合です。この様な時に、治療や生活の意志決定をするのは親しい御家族様になるのが一般的です。
さて、この場合に意思決定を委ねられた人はどう考えて物事を決断するでしょうか?患者様が元気だった頃の事を思い出し、本人ならどういう判断をしたかと考えるかもしれないし、本人の意思が分からない以上は全力で治療や延命をしようと思う人もいるかも知れません。ただ、いずれにしても、患者様からみてその判断が正しかったかどうかは分かりようもなく、決断を下す御家族様には心理的負担が生じる事が多いです。
将来こうした事態を避けるために、まずは自分の判断力が十分にある時から、自分の意思が表明できなくなった場合に後を託すであろう人達に、自分が生き死にに関してどの様な価値観を持っているのかを共有しておくと、御家族様の負担をいくらか減らしえます。人によってはその様な話をすること自体が負担になる場合もあるので人それぞれではありますが、可能であれば御家族様や医療・介護スタッフなどとそういう話をしておくのも良いでしょう。
医療業界ではこの様な話し合いをACP(Advance Care Planning)と言います。日本語では予め治療介護の計画を練るといったところでしょう。基本的にはACPの時点で何かを決定すると言うよりは、色んな想定をしておくことで本人の価値観を家族や医療スタッフが共有する為に行われる物です。終末期に際して医療スタッフは医療の心配ばかりしがちですが、本人からすると、何をしておきたいとか何を伝えておきたいとかどういう人と過ごしたいとかの方が気になる場合もあるのです。患者様のそういう要望を踏まえた上で、医療や介護の選択をするのが重要になります。事前に話し合っておくことで、その後の意思決定の役に立つでしょう。
本人の意思が分からない場合、その治療や介護に関しては、家族の間でも様々な意見があり、方針を巡って喧嘩になる事も残念ながら少なくありません。ACPの考え方が、そういう不幸を避けるための一助になれば幸いです。
それではまた。合掌。
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