典座

 禅宗系の仏教で特に曹洞宗ではお寺の料理担当の僧である典座(てんぞ)を大変重要視しています。道元禅師以前は、座禅やお経の研究ばかりがありがたがられ料理当番は雑務として蔑まれていたのですが、宋に留学した道元禅師が現地の典座に感銘を受けて帰国しその地位は正当に評価されるようなったのです。禅は行住坐臥の生活のすべてが修行とされます。心を込めて僧に食事を供養する喜びをもつことは大切な修行です。食事を供される僧がどんな人であろうと等しく敬意をもたねばなりません。また、用意できた食材の質や量にあれやこれやと言わず、あるものをあるがままに慈愛をもって扱い出来る限りの事をします。そうした積み重ねで大きな悟りの心も磨かれていくのです。

 こうした典座の修行は出家した僧侶が対象ですが、その心意気は在家信者の仕事にも通じるものがあります。自分が担当する商品やサービスは顧客の幸せを願って誠心誠意に工夫を尽くすべきですし、無限にあるわけではない予算や人員をいかにやりくりするかは腕の見せどころです。一方で組織全体としての社会貢献を見据えつつ不当な労働搾取を防ぐ大局観を養わないと持続可能なみんなの幸せにはつながりません。

 また、かつての典座が軽くみられていたように、会社組織の看板となる部署でない組織を支える裏方の仕事は現代においても軽視されがちです。社会全体にも道元禅師が行ったような改革が望まれます。

コメント

このブログの人気の投稿

妙好人、浅原才市の詩

現代中国の仏教

懐中名号