施設での老人虐待を防ぐ
昨日また、特別養護老人ホームで老人の虐待があったとの報道がありました。弱者への虐待事件は残念ながら後を絶ちません。しかし、今回は、時々おこる一部職員による入所者への隠れた暴行ではなく、おむつを自分で交換させないために行われた不適切な身体抑制が虐待とされた事件です。こういう身体抑制は組織的な関与がなければ不可能です。報道でも22人の職員が関与し、中心的役割を果たした4人が解雇されたという事です。
今回の問題で、職員の糾弾を行うのはたやすいですが、それが本質的な解決につながるかは疑問です。
被害にあった入所者は11名いたとされますが、これほどの人数の入所者が勝手におむつを脱ぐ原因は何でしょうか?認知機能障害の人の中には特に理由もなく脱衣する例もありますが、これだけの人数となると、おむつの中が不快といえる状態になるまで交換されていない可能性もあります。これが正しいと仮定して、次になぜこんなことになるのか考えてみましょう。
厚労省から公開されているこの施設の情報によると、去年9月時点での入所者は定員いっぱいの80名で、そのうち生活に全面的な介護を要する要介護度4と5の人は62名でした。これに対して介護職29名、看護職4名の職員がこの施設には在籍しています。職員はもちろん交代制なので、おそらく夜間の職員数は一桁だろうと思われます。
この状況で予測されることは、絶望的な労働力不足により、十分な介護が出来ていないというものです。清潔を保つことも、安全の確保も困難であったろうと思われます。不適切な身体抑制を容認するものではありませんが、現場には相応の苦労もあったのでしょう。
よって今回の根本的な問題は、介護職の労働環境の劣悪さにあると言えます。近年、増加する老人に対しての介護への予算は不十分であり、介護士は過重労働を強いられつつも、その収入は日本人の平均未満です。重労働に低賃金では労働者が不足する訳です。
介護の労働環境を改善することで、虐待事件は大きく減らせるはずです。この問題の解決のために介護予算の増額を希望します。また、十分な労働力確保のためには、予算の他に、他業種も含めた仕事の効率化や少子化対策など社会全体の改革も必要になります。今回のような虐待事件は、社会構造を変えないと今後も起きうるものだと懸念されます。
人生の終わりに近い先輩方が安心して過ごせる社会が来るように努力してまいりましょう。
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