雨安居
梅雨の時期になりました。お釈迦様の在世の頃、僧侶は雨季には屋内に籠もって修行をしていました。これは安居として日本の禅宗系の宗派にも伝わっており、今でも雨の多い初夏から夏にかけてお寺にこもり修行に励む僧がいます。
日本の主な禅宗は国内での成立の順に、臨済宗、曹洞宗、黄檗宗です。このうち黄檗宗と臨済宗は、唐代に成立した臨済宗の流れをくむ宗派です。臨済宗は宗祖の臨済義玄の名をとったものですが、実は黄檗宗の黄檗はこの臨済義玄の師匠である黄檗希運の名から来ています。
この師弟は実に豪快で、臨済義玄は師の黄檗希運と肉体言語で語り合い(殴り合いとも言う)悟りを開いたとされます。さて、悟りを開いた後も、この師弟にはひと悶着あります。夏安居の期間は出入り禁止で修行に励むのが決まりですが、その禁を破って夏安居の中日に師の黄檗の寺に訪れた臨済は師を見下す発言をして、数日後にこの時期は出入り禁止のお寺から退出しようとします。この暴挙に対してまたまた黄檗は臨済を殴りつけ追い出します。追い出された臨済はしばらく歩いていきますが、反省して黄檗の元に戻り夏安居を終えるまで修行をしたとされます。悟りとは悟ってしまえば終わりではなく、思い上がらずに努力を怠ってはいけないという話ですが、いちいちその言動がパンクな臨済にはそれ以上の魅力があります。もっとも二人共、現代に生きていれば様々なコンプライアンス違反で捕まっているでしょうけど、法の不遡及の原理は守られるべきです。
何かと閉塞感が漂う社会情勢の今日、先人の豪快さはある意味うらやましい面もあります。臨済宗は、日本でも一休や白隠や沢庵や仙厓などクセの強い快僧を多く生んでいます。開祖の魂は確実に引き継がれているようです。合掌。
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