はじめまして。
皆さんはじめまして。私はビハーラ活動を行う安居堂の至道と申します。本業は地方都市で内科医をしております。今回、ネット上で活動させていただくあたり、まず、ビハーラとは何か、そして安居堂が目指すものは何かについてお話したいと思います。
現在の日本ではビハーラと言うと仏教的立場から運営される終末期医療施設を指すことが多いです。医療における終末期とは様々な解釈がありますが、一般的には治療困難で死期の近くなった患者様の身体的精神的な苦痛の緩和・解消を目指す医療や介護を指します。当サイトでも仏教的な終末期医療・ケアの事を指してビハーラという言葉を使っていきます。一方で、ビハーラとは元々はサンスクリット語で寺院・精舎や安住の場所を意味する言葉です。初期仏教の時代、僧は諸国を托鉢や布教をして巡っていましたが、雨季は建物のなかで修行に励んでいたとされます。この時代の僧侶にとってビハーラは厳しい環境から身を守り修行に専念できる安らぎの場であった事でしょう。日本や中国ではこのビハーラに籠っての修行を安居と呼んでいます。
ご存じの方も多いかと思いますが、終末期ケアを行う施設として有名なものにホスピスがあります。このホスピスは元々はキリスト教の巡礼者の宿泊地として使われた教会の意味でした。この影響から終末期医療を扱うホスピスは当初はキリスト教関係の病院から始まっています。ビハーラは、1985年に仏教を背景とする終末期医療施設にビハーラと名付けることを、当時、仏教大学の研究員だった田宮仁氏によって提唱されたのが始まりとされています。田宮氏の思想としてのビハーラは単に終末期医療に留まることなく、それ以前の療養生活や日常生活にも及んでいます。仏教はお釈迦様が生老病死の苦を見てこれを克服しようとしたことから始まったと伝えられております。死の問題はいま臨終を迎えようとしている人だけの問題ではなく、生あるもの全ての問題でもあるのです。
一方で、意外に思われる方も多いと思いますが、医療現場において終末期という言葉の意味するところは必ずしも一定しません。それもそのはずで、疾病の種類によって急速に悪化するものや、何年もかけてゆっくりと進行するもの、患者様自身の意識や認知機能の程度など違いが大きく、多種多様な終末期があるからです。病院の集中治療室で治療されている終末期の患者様もいれば、ご自宅で日常生活を送られている終末期の患者様もいるのです。こうして考えると、すでに病気に苦しむ人達だけでなく、やがて必ず死を迎えなければならない我々もまた、ビハーラ的なものの考え方をする意味はあると思います。田宮氏はビハーラについて「限りある生命の、その限りの短さを知らされた人が、静かに自身を見つめ、また見守られる場である」と述べています。
現在、様々な仏教宗派がビハーラ施設を開設していますが、全体から見るとあまり数は多くありません。多くの仏教者はその最期を一般病院や老人病院で迎えています。もちろん、各病院のスタッフも親身になってケアして頂いていると思いますが、一般の医療機関では患者様が合掌をしたり、あるいは読経しただけでも不吉だとか縁起でもないとかの苦情が寄せられる事も少なくありません。また、一部のビハーラ施設では特定宗派への改宗を患者様に強要しているところもあると聞きます。
安居堂は日本の伝統仏教を基本として医療者の立場から各宗派の仏教者の皆様や仏教に興味がある方々のお役に立てる事を目標として活動しております。このサイトではインターネット上で、様々な仏教の話をしていくことで、種々の苦しみからのがれ安居できるビハーラを皆様の心の中に築いていければと思っています。
それでは、これから宜しくお願いします。合掌。
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