飲む中絶薬
内服する人工妊娠中絶薬ミフェプリストン(と中絶胎児排出目的のミソプロストールのセット)が今週ラインファーマ社から厚生労働省に承認申請される。1年以内には承認される見通しだ。
人工妊娠中絶の手術は母体に大きな負担となるため、内服薬が承認されれば中絶する女性の心身の負担を緩和するのに役立つ。ミフェプリストンは1988年から一般に使用され既に80ヶ国近くで承認されており安全性は十分だ。手術と違って術者による当たりハズレが無く、ヒューマンエラーが起きる可能性も少ない。費用も手術より圧倒的に安く、手間や苦痛も少ない。画期的と言ってよい薬だ。国によって違いはあるが今回の申請では妊娠後63日目(第9週)までの服用が必要になるとみられる。ある程度の時間的余裕はあるので、気がついた時には内服出来る時期を過ぎていたという人もさほど多くは無いだろう。また、悪用を防ぐためにアメリカでは医師が見ている前で内服する形となっている。
コロナ禍の影響か令和2年の日本の人工妊娠中絶件数は14万5340と令和元年の15万6716より減少したがかなり多い。飲む中絶薬が認可されれば中絶が増えるのではないかと危惧する声もあるが、カナダでは中絶薬の導入前後で、明らかな中絶率や有害事象の変化はなかったという例もある。中絶手術費用が高額でも妊娠を継続し出産した方がかかる費用は高額であり、中絶の必要がある人は無理をしてでも中絶するものだ。また、出産の意思がある妊婦が、中絶費用が安くなったからという理由で中絶することもまずいないだろう。どっちみち中絶率が変わらないのなら中絶する人の経済的精神的肉体的負担を軽減するのはよいことだと思う。
個人的には全ての子供に無事生まれて幸せに生きて欲しいと思うが、例えば強姦などで望まぬ妊娠をした女性に命の危険まで背負わせて出産させるのは非人道的といえる。また、貧困状態で妊娠してしまい中絶せざるを得ないこともあるだろう。母体が妊娠に耐え得ぬ状態ならば言うに及ばない。中絶絶対反対のプロライフ派の人が想像するような気軽に胎児を殺しまくるサイコパスはいてもごく少数であり、彼女らの蛮行を防ぐためにその他大勢の人を不幸にするのは間違っている。
飲む中絶薬が無事に承認されるように祈る。
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