ワクチン陰謀論

 新型コロナウイルスのワクチン開発競争が進む中、様々な陰謀論が出ています。少し考えれば嘘だと分かることでも、例えばワクチンを開発した国や、調達の外交交渉にあたった政治家が嫌いな人はその国や個人を批判したいが為に荒唐無稽な陰謀論を信じて拡散する傾向があるように見えます。放っておいても良いのかも知れませんが、多少なりとも反論しておかないと、嘘のほうが事実のような風潮が出てきかねません。今日はよくある陰謀論について反論していきます。

 まず、製薬会社が儲けるために新型コロナウイルスを広めたという陰謀論です。つまり、ワクチンや治療薬は既に開発済みで、営利目的で新型のウイルスをばらまいたとする説です。その場合は当然、関係者は既にワクチン接種済みで薬も常備している設定です。しかし、ワクチンや薬は大規模な臨床試験をしないと有効性の確認が出来ません。つまり、密かに保有する恐ろしいウイルスへの確実な対抗手段は閉鎖された少人数の集団では開発不能です。

 次、ビル・ゲイツがワクチンにマイクロチップを仕込んで世界征服を企んでいるという陰謀論です。反論の必要が無いくらい馬鹿馬鹿しい話ですが、一応反論すると、目視できない大きさのマイクロチップなんてありません。注射する時に手動で仕込むんだと言う人は、ビル・ゲイツが世界中の医者や看護師を買収できるほどのお金持ちでは無い事を知るべきです。

 次、アメリカの陰謀でワクチンではなく他国の市民に被害を与える毒物を準備しているといいう説。今までも他のワクチンで同じことが言われてきましたが、アメリカ製のワクチンを使用して何らかの壊滅的被害が出た前例はありません。また、これほど大規模に毒物を用意するなら、関係者が多すぎて隠蔽不能なのは自明です。

 最後、それでも副作用が起きるから反対という意見。これは価値観の問題なので個人的に嫌だと言う分には問題ありません。ただ、副作用の問題を誇張して言うのはやめていただきたいです。確かに、ワクチン接種により生じた自己免疫性の疾患で重篤な後遺症を残す例もあり、個別の話としては悲惨です。そうなる可能性がわずかでもあるならばワクチン接種に反対だとする人がいてもそれは止められるべきではありません。しかし、あたかも接種すればみんなそうなるかのような言い方をされたり、ワクチンは実は効果がないというデマがセットで語られる事が多いのも事実です。こうしたデマは何らかの理由でワクチン自体を否定したい陰謀論者にも多用されています。各々のウイルスやワクチンについて効果の高い低いはあるでしょうが、治験をクリアして製品化されたワクチンについては一定の効果は担保されています。流行するインフルエンザの型を読み間違えて効果が薄くなる事はありますが、それは予測のミスでありワクチンが無効であることを意味しません。ワクチンの効果自体が嘘だと言うのは流石に問題です。もちろん、今回のような急造のワクチンに関して安全性有効性の検討に慎重なるのを否定するものではありませんが、著しく恐怖を煽るデマが広がるとワクチンの接種率が下がり集団免疫の効果が大きく損なわれる可能性もあります。何気なく吹聴拡散したデマで誰かが死ぬ事は十分にあり得るのです。情報発信には十分に注意してもらいたいです。

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